流石に場所を移したあたし達は、今裏庭に居る。
昼休みのこの時間は、大抵どこも人で溢れて居るものだけれど、この学校内には独特の立ち入り禁止区域がある。
“立ち入ってはいけない場所”じゃなくて、“立ち入ると危ない場所”。
つまりは彼らの縄張りだ。
そういう場所は一般の生徒達も周知していて、寄り付かない。
この裏庭もそのひとつだった。
「ジョー達は今日来ないって言ってたから、貸切だよ」
「……」
「ほら、お弁当食べんでしょ? 座れば?」
言って長い手足を投げ出して、裏庭に適当に配置された木製のベンチにどかりと腰掛ける。
それからぽんぽんと自分のすぐ隣りを叩いた。
「隣りおいでよ」
そこで食べるくらいなら、このまま立って食べた方がましだ。
「…来いよ」
短気な彼はすぐに表情を変える。
あの鋭い眼光が、あたしを射る。
ぎゅ、と噛み締める唇に、血が滲んだ。
一歩、彼の元へと足を踏み出す。
お弁当なんか食べれなくていい。
このひとが目の前から、今すぐ消えてくれるなら。