教室の中に、彼の席は無い。
正しく言うと本当に無いのはあたしの席で、不登校の彼の席を勝手に拝借しているのだ。
あたしが。

他のクラスメイト同様、あたし自身も彼と知り合うまでは、彼という存在をいない者としていた。

形だけ揃えられた教室で、見た目だけ並べられた席で、彼は存在すらしていなくて。

あたしの席がある日無くなったので、空いていた彼の席をあたしが貰ったのだ。


あたしも教室から彼を消したひとりだ。
でもそれを、彼と知り合うまであたしは、なんとも思っていなかった。

教室は、そういう場所だった。