◇ ◆ ◇


有名な著者の大人達は言う。

“いじめは見逃しちゃいけない。見過ごしちゃいけない。大人は子供を守る義務がある”

教壇に立つ大人達は言う。

“みんなで仲良く、助け合いましょう。学校は人生の学び舎なんだから。いじめなんてそんなもの、このクラスには存在しない”

テレビの向こうの大人達は言う。

“いじめられる側にも非はある”


──ぼくは。


彼らの言う“子供”にはきっと該当しなくて、彼らの言う“みんな”には属さなくて、だけどぼくが悪いんだってことは、言われなくても解ってた。

だからきっと誰も助けてくれない。


はやく大人になりたくて、だけど大人にはなりたくなくて…あの小さな暗い部屋で時間だけは確実に、過ぎ去っていった。