ぼくにとってこの世界は、生きているそれだけで、こわいものだらけで、痛いことだらけで。

優しい思いに触れても痛くて、強さに惹かれても現実は痛くて。

何したってどうしたって、けっきょく、痛いなら――

「…っ、は、ぅ、うぅ…!」

ふたりなら少しぐらいは…ほんの少しぐらいは、分け合えるのかな。

何かが、変わるかな。


ごしごしと服の袖で涙を拭う。
それでも止まらなかったけれど、少しだけ落ち着いた体で息を吸った。
冬の冷たい空気が肺いっぱいに膨らむ。

ぼくは振り返り、来た道を走り出した。