「えー、待ってよ、せっかくなんだからさ、紹介してよ」
「あなたには関係のない人よ。ついでにあたしの友達でもないし、赤の他人」

「はは、そうだよね。友達、居るわけないもんねぇ…でも…」

月子ちゃんの影とその人の影が、ゆっくりと重なっていくのが視界の端で見えた。

やがて影もコンビニの明かりも視界からは消える。
振り返りもせずにぼくは必死に走ったから。

走って、走って。

暗い夜道を外灯が流れる。
涙と共に。

…月子ちゃんはどうなるんだろう。

相手が月子ちゃんをいじめている奴なら、この後どうなるかなんて、容易に想像できる。
月子ちゃんだってきっとそうだ。

だけど月子ちゃんは、ぼくに走って、って。
逃げてって、言った。

だから、逃げた。

逃げることだけは得意だから。
いつも逃げてばかりいたから。

それしか、できなかったから。