突然のことによろけながらもなんとか足をつき、月子ちゃんを見る。

月子ちゃんはまっすぐ相手だけを見据えていたから、どんな顔をしているのかは、わからなかった。

月子ちゃんの影に隠れたぼくにはもう。

「…行って。走って、逃げて」

小さく、呟いた言葉と同時に、ドン!と背中を強く叩かれる。

心臓を直接叩かれたような衝撃を受け、ぼくは条件反射のように、走り出した。


月子ちゃんを、置いて。