改めて見つめる先の月子ちゃんは、いつもの月子ちゃんだった。
表情の少ない、冷静でクールな月子ちゃん。
まるで何もなかったみたいに、ただ静かにそこに居る。
さっきの会話なんて、まるでなかったみたいに。
「気をつけて」
「う、うん…」
ぼくにこれ以上のことを聞く権利なんて、あるのだろうか。
知りたいと願うことさえ厚かましいのではないのだろうか。
それとも、月子ちゃんは――
「…あれぇ、山田さんじゃん」
突如、投げかけられた声に、ふたり揃って体を傾ける。
コンビニの自動ドアの開く音と共に出てくる、店内の明かりを背負った暗い人影。
ぼくよりだいぶ背が高い。
声からして男の人の声だ。
「うそ、逢引? デート? 妬けちゃうなぁ、俺にはあんなに冷たいのにさ」