「で、でもぼく、さっきのカレーは、美味しかったよ、ホントだよ」
「…そう」

「家に帰ったら吐いちゃうかもだけど…でも久しぶりに自分の意志で、食べたいって思えたんだ。そしたら美味しくて、びっくりしたんだ」
「何気に失礼ね。以前あたしが渡したおにぎりは?」

「あ、あれもちゃんと食べたよ…! …その後のごはんと一緒に吐いちゃったけど…」

あ、ダメだ。
やっぱり結局、情けない。

言いながら思わず俯いたぼくに、月子ちゃんがゆっくりと口を開く。

「いいんじゃない。あのカレーはあなたへの対価だもの」
「対価…?」

その視線は空に浮かんだ月を見ていた。
無意識にぼくもそれを追った。