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――食事が、苦手だった。

母さんがぼくを「日向」って呼ぶから。
父さんはぼくをもう見ないから。

晃良兄さんは何も言わないけれどきっと呆れてるに決まってる。
たったひとつの約束さえ守れなかったら、きっともっと。

日曜の昼食だけじゃない。
平日の、いつも学校に行くフリして母さんと食べる朝食も、1日部屋にひきこもっていたのに、学校での出来事をウソで固める夕食も。

苦手だった。
イヤだった。
イヤだったんだ、本当は。

月子ちゃんと入れ替わってしまうのは、そんな食事の際だった。

行かなくちゃと思う度に足が竦んで、またいつものぼくの逃げる心だけが逸る。

あの日以来手首の包帯はまだ綺麗なままだったけれど。


もう言い逃れできない。
こんな風になってしまったのは…月子ちゃんを巻き込んでいるのは、ぼくだ。
ぼくのこの、逃げ出す心が。


ぼくの弱さと狡さがすべての元凶なんだ。