右、左、足はペダルから離さない。
傾いた方にハンドルを回す。
目はまっすぐ前だけを見る。

しっかり前を向いていれば、自分の進む道が見えていれば、転んだってこわくない。
痛くったって傷つかない。

兄さんが記憶の中で笑う。
兄さん…日向兄さん。

どうして、死んじゃったの。

ぼくにこんなこと言う権利なんてないてわかってる。
だけどぼくは、生きていてほしかった。どんな形でも良い。

生きていてほしかった。

諦めるなって言ってくれたのは、いつだって日向兄さんだったから。

諦めてほしくなかったよ、日向兄さんにも。