こんなに声を出したのは、いつ以来だろう。
足が浮く。
汗が噴き出す。
風を感じる。
ぐん、と力強く、押される感触。
ふと、昔の記憶がよみがえる。
そうだ、昔こうやって、自転車の乗り方を教えてもらったことが一度だけあった。
日向兄さんと、晃良兄さんに。
どこかの公園で…家の近くの公園だったっけ。
ぼくはまだ小さくて、補助輪付きの自転車に乗っていて。
その時は確か、日向兄さんが新しい自転車を買ってもらっていて、それまで使っていた自転車をおさがりにもらって、それに乗る為の特訓をしていたんだ。
特訓は一度きりで終わってしまい、結局ぼくがその自転車に乗れることはなかったのだけれど。
そんなことがぼくにも、あったんだ――