「…マジかよ…」

朔夜くんが、隠す素振りもなくぼくの顔を見てぼやく。
彼は確実に、ぼくのことが嫌いだと思う。

「まぁ月子にも頼まれたし、しゃーねーか…」

そしてすごく月子ちゃんのことが好きだと思う。
ほぼ初対面のぼくにも、月子ちゃんのことを大事に思っているのがすごく伝わってくるくらい。

だからこそぼくのことが嫌いだというその気持ちには、全く持って同感だった。

「よ、よろしくお願いします…」

もう年下とか関係なしに、彼には頭が上がらなかった。
いろんな意味で。

朔夜くんは面倒くさそうにため息を吐きながら、まっすぐぼくを見据えた。
朔夜くんは、いつだって相手をまっすぐ見据える。

射抜くみたいに、鋭い眼光で。
ぼくなんかとは大違いの、強い眼差しで。

真剣に向き合う彼の姿は、男のぼくから見てもかっこいいと思った。