「え…えぇ!! つ、月子ちゃん…?!」

月子ちゃんに無茶ぶりにぼくは思わず声を上げる。
だけど華麗にスルーされた。

「うそ、兄ちゃん自転車乗れないの!?」
「えー…ぼくこの後勉強が…」

「そうだよこれ以上余計な手間や迷惑をかけるわけにはいかないし自転車くらい乗れなくても死にはしないし…!」

各々の声を上げるぼく達に、月子ちゃんは問答無用で言い放つ。

「そろそろ乗れるようになってもらわないと困るのよ、あたしが」
「で、でも、ぼく運動神経ないし、自転車なんて、ぜったいムリ…っ」

相変わらず真っ先に飛び出した言葉が情けないのは百も承知だ。
ああ、また「やる前に言うな」って、絶対に言われる。
そう思った時。

「「やる前にムリって言っちゃダメなんだよ」」

満くんと望くんに、おんなじ顔でおんなじ声音で言われた。
それがあまりにも月子ちゃんに似ていてそっくりで、そっか姉弟なんだなって思った。

「は、はい…」

そう思ったらぼくは、もう逆らえなかった。