「月子ちゃん、今日大収穫だねぇ」
「人手もあったから。お肉冷凍庫に入りきるかしら」

台所のテーブルに買い物袋の中身を取り出すのを手伝いながら、きょろきょろとあたりを見回す。

部屋にひきこもりのぼくは台所に立つなんてこと自体ほとんど無いので、見るものすべてが新鮮だった。
台所は月子ちゃんと弦くんとぼくが立つと、それだけでいっぱいになった。

「月子、先におやつにしよーぜ、お前のこと探し回ってちょー腹減ったぁ」

満くんがバタバタと台所に駆け込んでくる。
その後ろから望くんも続いて来た。

台所にある時計を見ると、もう3時。
確かにおやつの時間だ。

「満は家の中しか探してないでしょ。その後朔夜くんに任せきりだったし」

弦くんが呆れたように笑いながら、買い物してきた戦利品を選別し、月子ちゃんに手渡す。
月子ちゃんはそれをテキパキと決められた場所にしまっていく。

「おれだって庭とか探したし! なー望」
「ぼく庭で大根の収穫してたから。来たっけ? 満」

「探せよお前も!」
「満、急場の時っていうのは、焦らずいつもと同じことをして過ごすのが良いんだよ。 その証拠に月子ちゃんだって無事帰ってきたし」

「一応焦ってはいたんだなお前。んで収穫した大根は?」
「あ、庭に忘れてきた」

「んもー! 月子おやつー!」
「大根でもかじってなさい」

賑やかなふたりを置いて月子ちゃんはあくまで月子ちゃんのペースで答える。
ぼくは会話についていくのがやっとだった。