「…なんだよ、あんた…」

すぐ目の前で朔夜くんにじろりと睨まれて、体が竦む。
朔夜くんはぼくよりも少し背が低いだけで、その雰囲気も迫力も、とても年下には見えなかった。

だけど怯んでばかりはいられない。
これだけは、言わなくては。

「つ、月子ちゃんは、ぼくが、その、呼び出してしまって…! 今までムリヤリ、つき合わせてしまったんです…! ごめんなさい、悪いのはぼくなので、月子ちゃんを怒らないであげてください…!」

言って勢いよく頭を下げる。

謝ることには慣れていた。
頭を下げることくらい、どうってことなかった。

「やめて」

頭の上で月子ちゃんが、ぴしゃりと言った。

その声音に含まれる怒気を感じて、ぼくはゆっくりと頭を上げる。
すぐ隣りに居た月子ちゃんと、目が合う。

月子ちゃんは怒っていた。
ぼくに対して、怒っていた。