そして──迎えた放課後。
「……」
思わずごくりと唾を飲み込んでしまう。
ひーの家に着いてから、約5分。
インターホンを押そうと指を突き出したまま、その先のボタンに触れることができていなかった。
なんとなく……緊張。
ひーから何を聞かされるかわからない。
いろんな意味で、ひーに会うのが怖い。
こんな気持ちは初めてだから、家に入るのをためらってしまうんだ──。
すっかり見慣れた“中里”という表札。
小さい頃から、この家には何かあるたびに来ていた。
でも……今見て、ひどく懐かしく感じた。
あたしがひーを妬むようになってから、しばらく来ていなかったから。
久しぶりだな……なんて考えると、さらに緊張してしまう。
あたしは深呼吸をすると、導かれるようにボタンを押した。
ピーンポーン、と無機質な音が響く。
その時だった。
ドタドタ、と走ってくるような……いや、人が転がり落ちるような音がした。
そして──。
「ひ──っっ!!!」
中から聞こえた悲鳴に似た声。
──嫌な予感がした。