「おはよー!」
ガラッとドアが勢い良く開かれ、高村くんが教室に入ってきた。
「おはよう、律ー」
「おっはー♪」
久しぶりの学校が嬉しいのか、にこにこと上機嫌に挨拶を交わす。
「中里おはよう」
「おはよー」
まずはひーに挨拶。
そして隣にいるあたしに目を向けると、
「おはよう、伊沢」
ふんわりと優しく微笑んだ。
でも、みんなに向けていた笑顔とは少し違う──大人びた感じ。
いつもの元気いっぱいの笑顔も好きだけど、あまり見たことのないその表情に思わずドキッとしてしまう。
「お、おはよ……」
なんだか恥ずかしくなって、顔を見られないように俯いてしまった。
みんなは変わったって言うけど、本当に何も変わってない。
高村くんにはいっぱいお世話になった。
「もう大丈夫だよ」って……ここで笑顔のひとつぐらい見せてあげたいのに。
こういう時、ひーなら可愛く笑えるんだろうな。
ひーに対する劣等感や嫉妬は前ほどなくなってきてはいるけど、
“ひーになりたい”
という叶わない願望は、いまだ抱えたままだった。