幸生くんが見つかってから程なくして、小夜子ちゃんも見つかりました。

小夜子ちゃんは瀕死の重傷を負って病院にいたのです。


これは後から聞いた話ですが、見つけてくれた人によると、
幸生くんと小夜子ちゃんは同じ場所に倒れていたそうです。

小夜子ちゃんを守るようにして覆いかぶさっていた幸生くんには既に息がなく、幸生くんの下で小夜子ちゃんは幽かな呼吸を繰り返していました。

空襲後の混乱の中で、まだ息のある女の子だけでもと思い病院に運んでくれた人も、我が子を探している途中でした。
丁度、幸生くんと小夜子ちゃんくらいの兄妹だそうです。



小夜子ちゃんは、幸いにも一命を取り留めました。


でも、右腕を失ってしまったそうです。






私は、それから間もなくして、亡くなった父の兄を頼って母と二人で町を出ました。


幸生くんのお母さんに別れの挨拶も出来ぬまま、小夜子ちゃんと再会することも出来ぬまま、慌ただしく行かなければなりませんでした。




父の兄の家で暮らすことになったものの、私たちが歓迎されていないことははっきりと分かりました。


でも、他に行くところなんてありません。
耐えるしかなかったのです。