「あぁ」と、雪乃はため息とともに席にくずれるように腰かけた。

 工藤も鼻をすすりながら、それに倣う。

 雪乃は涙を両手で拭くと、しばらく咳き込んだあと、工藤の目をみつめた。

「待っててね、つらいけれど、仕方ないの。確かに、お願いされたのは私だけど、ラフに考えずに、ちゃんと断るべきだった。失敗したって思う・・・。ロンドン旅行も行けなくなっちゃった」

 雪乃の顔をじっと見つめていた工藤は、
「大丈夫、大丈夫だから。僕にまかせて。雪乃の言いたい事はよく分かるから。ロンドン旅行は残念だけど、また行けるさ」
と、やさしくうなずいた。

 想いが伝わってホッとした顔で雪乃もうなずいた。


 残りの時間、2人に言葉はいらなかった。