しかし、執行猶予中に、再び覚せい剤におぼれた和美は逮捕され、前回の刑と合わせての実刑を余儀なくされたのだった。

 すでに29歳、刑務所での時間がいかに長かったかを思い知る。


 ふいにクラクションが鳴った。

 ふりむくと黒いベンツが歩道の左側に停車している。

 助手席の窓からなつかしい顔が声をあげた。
「和美~」
満面の笑顔の主、それはサキだった。

「サキ、久しぶり!」
手をふって答え、小さなバッグを片手に走り寄る。

 車からうれしそうに降りてきたサキと抱き合う。
「久しぶり、楽しみに待ってたよ」
ほのかにピーチメルバを香らせたサキがくしゃくしゃにした顔を見せて言った。

 サキとは刑務所にいる2年半のうち、ほぼ2年の間、同じ部屋だった間柄だ。同じ年齢ということもあって、2人はみるみるうちに仲良くなり友情をはぐくんだのだ。