「はーはっはっはっ!お前はもう、逃げられないぜよ!」

「くそっ…なんてこった…」

膝をつく眼鏡の男に、赤毛に銀のメッシュという風変わりな警官が言った。

「残念だったな。
12時39分、好物はオレオだと言いまくっていたくせにリッツサンドを買い占めた容疑でお前を逮捕するぜよ」

「くっ…。あの時…監視カメラに顔さえ映らなかったら…!」

「高島屋…」

警官は、男の名を呼びながら肩に手を置いた。

「お前は、オレオだけでは飽き足らず、リッツにまで手を出した。あの時からすでに、高島屋…お前の未来は決まっていたんぜよ。

せいぜい、浮気した情けない自分を悔やむのだな」

男に小さく笑いかける警官。そして…

カシャ──…

手錠が静かにかけられた。

「待って!」

するとその時、1人の女が男のもとに駆け寄った。

「逮捕されなければならないのは、あたしです。
彼は何も悪くない!あたしが彼にリッツサンドを12袋買ってきてと頼んだの!」

ウェーブのかかった髪を揺らし、涙ながらに女が必死に訴えかけても、警官は目をかたく閉じ、首を横に振るだけ。

「いいんだ、みつ子。俺は罪を償う。どうか…幸せに…」

寂しげな笑顔を浮かべると、男は警官と共にその場をあとにした──。