菜落ミノリのシャツは半分ボタンが取れ、シャツと同色の白い胸元が、はだけていた。
シャツの割れ目から、生まれたままの、白い脚が、伸びて。
その下に、水たまりみたいに、ストン、と落ちているスカート。
脱げかけた靴下の片方が、ゆらりと水に浮かぶカエルの卵みたいな形をしていた。
痛くて、とても直視できないと思うのに、わたしの体どころか、眼球すら、言うことをきいてくれない。
静止したわたしの眼球に、菜落ミノリの姿がジュウと、焼き付けられる。
泣いている。
泣いている。今まで能面で、顔色ひとつ変えなかった、菜落ミノリが。
・・・なにしてんの。
いや、それは、さすがに、うそでしょ、だめでしょ、やばいでしょ、やめなよ。
たくさんの言葉が、頭のなかでグチャグチャになる。ショックで、なにも言えなかった。
口が、パクパクしている。でも、空気が入ってこない。
肺がしぼむ。直接氷を押し当てられているくらい、背中が冷たくて、熱い。
冷たかった。熱かった。なにも言えなかった。わからなかった。立っていた。突っ立っていた。わたし。
飛び出していった、のは。