マシンガントークと一緒に、右・左とアタマをかたむける、アキ。髪が左右にゆれて、はじめて気づいた。

いつのまにか、伸びてたんだなぁ。

ついこの間までは、耳が丸出しの、ベリーショートだったのに。


中学二年生。

春・夏・秋・冬・二度目の春・そしてもうすぐ、夏。季節が過ぎるのは、早かった。


「男子ってみんな、マジ幼稚だよねぇ~」と一緒に言っていたアキには、彼氏ができたし、

「中学生活を存分に楽しんでください」と言っていた先生たちは最近、「この学年は成績がわるい、来年は受験生になるんだぞ」って話ばかりを、口にする。


入学前に、すこしだけ緊張して、油性ペンを近づけた。

その、サブバックに書かれた「三橋八子」の名前は、もうずいぶんはげて、今では「二橋ノ子」に見えてしまう。

ニハシノコ。あ、ペンネーム、これでいいかもしれない。


「ハチは?」


まだチャイムの時間ではないと、時計を確認してから、アキが言った。


「どうなの、田岡くんと!!」