その証拠に、いまにも目がふさがりそうに、ねむい。でも、口のなかには、ミントの味が残ってるから、ちゃんと歯は磨いてきたらしい。
わたしは自分の席に座ったまま、友人の木田アキを見上げた。
ちゅうちょなくわたしの前の席に座る、アキ。くずれたスカートのひだが、目の前に差し出される。
「・・・なんで、わたしに聞くかな」
ため息混じりに、言う。
もし、わたしと同時に、アキがこの質問を投稿したら、きっとアキのが選ばれるだろう。
上手なキスの方法。そのほうが、番組的にもおもしろい。
「ええっ!だって、こんなこと話せる友だち、ハチしかいないもん」
ハチしか、と言いながら、クラス全体に響きわたるような声で、アキは言った。
アキはいつも、声が大きい。
部活のかけ声だって、一番大きい。
わたしたちは、一年の最初から同じバスケ部だ。
アキは、わざわざ自己紹介しなくても、「あ、バスケ部でしょ?」って言われるタイプ。
ショートカットの、スマイル百倍元気印。手のひらにボールが吸いついているんじゃないかってほど、ドリブルがうまい。
本人は最近、足がガッシリしてきたって、すごく気にしてる。
親が通販で買ったらしいなんとかローラーで、授業中にふくらはぎをグリグリしていることを、わたしは知っている。