さっきまでは平らにしようと試みていた目が、丸くなる。

そうだったっけ、としばらく考えて、そういえば、と思い出した。


学年が変わる直前の春休み。

田岡は、事故にあって入院するとかで、しばらく塾を休んでいたことがあった。

それから、部活をやめたって、塾の会話のなかで言っていた気がする。そういえば、そうだ。すっかり記憶から抜け落ちていた。

でも、体育にはふつうに出ていたみたいだし、それが部活をやめた原因かは知らないけれど。っていうか、わたしに関係ないけれど。


っていうか。

っていうか。


っていうか、ばっかり唱えていたら、あっという間に、一週間が経ってしまった。

田岡の、すきなひと。判明するどころか、手がかり一つさえつかめていない。


わたしは、決定的なことに気がついた。

たとえ塾が同じでも、同じクラスじゃないのだから、手がかりを見つけるなんて、そりゃ難しいに決まってる。

だって、田岡を学校で見かけることは、一日に一回あるかないかレベルなのだ。

その一回で、田岡がうちのクラスの女子に話しかける瞬間なんて、とらえられるわけがない。