わたしが次の行動に出たのは、本当に、なんとなくだった。
机が空っぽだったから、だから、ただ、なんとなく。教室のうしろの、菜落ミノリの個人ロッカーを開けてみたのだ。
そこには、数冊のノートや資料集が、置いてあった。
わ、と思った。心臓が、トクンとはねた。
菜落ミノリも、置いて帰ってる。
空っぽを想像していたわたしは、すごく意外で、つい、それらを手に取ってしまった。
歴史の資料集。
これは、たしかに教科書類で一番重いから、置いて帰る人が大半だ。
それから、国語の便覧。これも、授業ですらほんとんど使わないしな。
でも、やっぱりわたしのよりも、使いこまれてる。
蛍光線の引き方、きれいだな。
ゆがんでる線、ないなぁ。書き込みの字も、やっぱきれい。
あ、でも、まちがったところ、ペンで塗りつぶしてる。修正ペンとか、使わないんだ。意外。
すごく、不思議な気持ちだった。
菜落ミノリは、あんがい、要領がいいのかな。マジメ一直線ってわけではないのかな。
ただガリ勉ですべてを詰め込むんじゃなくて、必要なところだけ、選び取っていたのかもしれない。