みんな、自分をゆがめて、ウソつきばかりだって、思っていた。
でも、立っていたことも、座っていたことも、たくさん、笑ったことも。
気づかなかっただけで、そのなかに、ホンモノだって、あったはずなのに。
ひっかかれたり、へこんでいたり。かならず一つは、傷を負っている机たち。
同じように並んでいる自分の机から、宿題を引っ張り出す。
なんのイタズラを加えられることもなく、新品の状態だった。
「アンタ、どこ行ってたのよ」
表紙絵として大きくえがかれたヒマワリが、えらそうに、わたしにそう言っているみたい。
全部をカバンにつめて、教室を出ようとした、そのとき。
ふと、菜落ミノリの机が、目に留まった。
机のなかは、空っぽだった。
持って帰るのが面倒で、教科書を置き去りにしているクラスメートが多いなか、それはとても、目立って見えた。
残して帰れなかったのかもしれないな、と思う。
次の日来たら、ボロボロにされていた、なんてことがあったら困るし。
優等生の菜落ミノリはもともと、置きべんなんてしない主義なのかもしれない。