顔の、すぐとなり。
充電器につながれた携帯の、ともっていたランプが消えた。
充電完了のしるしだ。充電器を、ひっこぬく。
今、わたしと外の世界をつないでいるのは、手のひらにおさまる、この一台だけだった。
自分から発信することはないけれど。
受信だけ。アキからは、毎日メールがくる。ときどき、電話もくる。
けれど、わたしは、そのメールに返信することも、電話に出ることも、していなかった。 もちろん、カラフルなブログたちも見ていない。
もし、電話に出て、「大ニュース!!」って、菜落ミノリの事故を知らせるときのような、興奮をはらんだ声が、耳に飛び込んできたら。
それを想像するだけで、ゾッとするのだ。
アキは、きっと、なんだかんだで楽しいだけだ。
アキの脳内にいるのは、田岡を好きなわたし。自分とおなじにしたいがために、つくられたわたし。
田岡の悪口を言われるのが許せなくて、嶋田さんをつきとばしたんだって、そう思ってる。
興味があるだけのくせに、おもしろい情報を知りたいだけのくせに、メール文にすると、「大丈夫?心配だよ」になる。
ばかじゃないの、ばかじゃないの、みんなおおばか。