「三橋って、大人みたいな字、書くよなぁ」
一度、中一のときに、田岡に言われたことがある。
先生から渡されるプリントを、続けてやっていた時だっただろうか。
本当にすごいなぁって顔で、わたしを見ていた田岡のまるい目が印象的で、記憶に残っている。
っていうか。
もしアキが言うように、わたしが田岡を好きだったら、たぶん、塾での勉強ははかどっていない。
することは、ひとつだけでいい。
アキの楽しそうな声を聞きながら、早く授業始まっちゃえよ、と思いながら、でも早く授業ぜんぶ終わればいいのに、とも思いながら、わたしは時計をにらみつける。
現在、午前七時五十九分。
なにかひとつだけしていればいい、もっと単純なイキモノになりたい。