マスを六つ進めて、二十七日のところに書き込まれているのは、『試合』の文字。
サボリが続くと、試合には出してもらえない。この夏の試合とは、サヨナラだ。
バスケットボールのザラザラした感触、なんだかもう、なつかしいなぁ。
・・・そんなことよりも、考えなきゃならないことは、いっぱいあるはずなのに。
自然な光も、人工的な光もほとんどない、うすぐらい部屋のなか。水色のコンポは、灰色に染められてしまったように見える。
ラジオは、ここ数日間、聴いていない。
あの日。海にもぐっても、空気を吸えないんだと、気づいてしまったから。
今まではずっと、夜の、一時間にも満たないひとときだけ、現実から解放される気がしていた。
あの瞬間のためだけに、生きていた。
今じゃ、朝も昼も夜も、ずっと逃げているわたし。逃げるのはいいとしても、たどりつく場所がない。
逃げてばっかりのわたしを、もうだれも、どこにも連れて行ってはくれないね 。