安曇 遊は、遠い存在だった。
若くして成功した美容師は、あの頃すでに何店舗も自分のヘアサロンを持っていた。
甘いマスクに柔らかい物腰、優しさが滲む笑顔。
王子様という言葉がぴったりと当てはまる大人の男は、どこを取っても完璧だった。
美しい人気のモデル達を相手に仕事をする彼、
一部の華やかな世界。
同じ場所にいても、成功しなかったモデルの私は蚊帳の外。
でも、そんな事は疾うに慣れっこになっていたから、微塵の羨望も持ってはいなかった。
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