久しぶりに吸い込んだ煙は、ちっともおいしくなかった。 「煙草、止めたんじゃなかったの?」 「…たまにはね。」 田舎にいた頃は、東京に行けば何でも手に入ると思っていた。 あんなに憧れていた街、 今となってはただの街。 「セナ、そろそろ返事を聞かせてくれないか?」 私を後ろから抱きしめる遊は、いつも優しい。 「まだ大学があるし、セナが迷うのも分かる。」 何の問題もない。 完璧な恋だ。 「でも、俺はこれから先の人生、ずっとセナと一緒にいたいよ。」 苦いだけの煙草は、 ちっともおいしくない。