よくある話だ。 よくある話、単なる幼なじみだった。 私の実家の向かいが、 伊織の家だったというだけ。 記憶を辿れば、いつだって伊織はごく当たり前に、私の隣にいた。 幼稚園のひよこ組で男の子に泣かされた時も、 小学校の運動会のリレーでビリになった時も、 中学のテニス部で先輩と上手く行ってなかった時も、 伊織はいつもただ、隣にいてくれた。 いつまでも泣き止まない私を、 いつまでも不機嫌な私を、 投げ出さないでいてくれた。