「ドア・・・閉めてください」
その声に、ようやく山本が佳織を見る。後ろにはぴったりと女がくっついてきている。

「おい・・・」
違和感を感じたのか山本がそう口にしたが、背中にあたる銃口が強くなり、
「いいから、ドア閉めて」
と強い口調で指示した。

 それでも山本はしばらくは佳織を見つめていたが、やがてボタンを操作しドアを閉めた。

「・・・動かせ」
命令形になった女が後ろからつぶやくように言う。

「バスを出してください。すぐに」
佳織の言い方に違和感を覚えたのか、山本はさらに口を開きかけるが、
「早く」
と言葉を重ねた佳織に首をかしげるとバスをゆっくりと出発させた。

 ステップを上がりきっていない佳織たちの姿は生徒はおろか、鳥岡にも見えていないようで、彼らは楽しくワイワイしゃべっていた。

「今から言うことをすぐに実行しろ。逆らったら殺す」

 女はつぶやくように言うが、佳織にはまるで耳元で言われているのかと思うくらい近くに感じた。