ホテルのロビーに降りてきた潤に、まっさきに声をかけたのは皆川幸弘だった。あの事件から４日が経ち、ようやく生徒たちに北海道に戻る許可がおりたのだった。

「皆川君、大丈夫？」
ロビーに設置されたソファに座りながら声をかける。

「俺は大丈夫。八木も元気そうだな」

「うん」
そう言いながら見た幸弘の顔は少しやせ、疲れがたまっているように見えた。

「すごいな、ニュース」
そう言いながら幸弘は出口を見やる。つられて潤もそちらを見ると、未だテレビ局のバンが数台ありマイクを持ったリポーターが待機しているのが見えた。

「今朝のニュースで寺田亜矢子が映ってたぜ」

「へぇ」

「あいつ、嬉々として悲劇のヒロインになってた。涙まで流してすごかった」