「どうもしない」
幸弘は口をとがらせて言った。

「そうだろうな」

 正直、修学旅行なんかに来るくらいならコートでラリーでもやってたかった。

 あのノートに誰の名前が書かれているのかは知らないが、いじめてもない自分が殺されることはないだろう、と思っていた。


『見て見ぬふりをした皆川幸弘も許せない』なんて、いくらなんでも書かないだろう。


 ドラマとかで『いちばんズルいのは無視したヤツだ』なんていう展開があるが、そんなの現実じゃありえないと知っている。

 罪の深さは、実際にいじめてたヤツの方が深く、そして重いにきまっている。