「ごちそうさまでした。」
カップを片付けながら、
あたしはもう何度目かも分からない言葉を口にした。
「先生。」
「ん?」
「スキ。」
間ができた。
この後、先生が何を言うか、あたしは知っている。
「ガキは、対象外。」
ほらね。
何度も言葉にした“スキ”。
そのたびに聞かされる“ガキは、対象外”。
「じゃあ、デートして。」
「デート?」
「明日の夏祭り。デートしてくれたら、逃がしてあげる。」
先生は少し考えた後、口を開いた。
「無理。仕事。」
「…ここに、いるの?」
「あぁ。」
書類と向き合ったまま、
俯き加減の先生の横顔。