「雨音は、意外としぶといよな。」
「迷惑?」
「いや。」
繋いだ手をひかれ、空いている方の手であたしの髪に触れる。
指先が、金色の髪を梳く。
「ガキは、対象外なんじゃなかったの?」
「しょうがねぇだろ、気に入っちゃったんだから。」
先生は、あたしを抱きしめると、髪を撫でながら呟いた。
「好きだよ。」
その声は、打ち上げられる花火の音に掻き消されてしまいそうな程、小さくて。
まるで、秘密の暗号のようだった。
たった一言、
それだけなのに、あたしの心は満ちていった。
何かを許されたような、息苦しくて、胸が一杯で、
泣きたくなる。