「……な、んだよ………。」


「……行かないで。」





……何言って…。


驚きと戸惑いで、俺は声が出せない。





梨子は、真っすぐな声で呟いた。







「……あたし、好きよ。朔ちゃんの事。」







それは、思いもよらない言葉で。





梨子は、俺の頬に触れた。


その、小さく冷たい手で。





俺の目を真っすぐ見つめて…………。







唇が触れるか、触れないかのところで、俺はその手を握った。



梨子の動きが止まる。






「…つり橋理論って、知ってるか?」




俺の問いに、梨子は首を傾げる。