「それから、甘えん坊でした。一人でいるのは、今でもダメなのです。」
それも、何となく想像つく。
……甘えたな末っ子のイメージ?
たぶん、家族にこれでもかってくらい愛されて育ったんだろうな……。
「…だから……朔ちゃんがいてくれてよかったです。」
「…………。」
「朔ちゃんがいてくれたから、私は一人ではありませんでした。
……私を連れ出してくれて、嬉しかったです。……おとぎ話の中の王子様に連れ出された気分でしたよ。」
………バカ女。そんな事、言うんじゃねぇよ。
理性を保つ自信が、どんどんすり減っていくようだった。
これ以上はマズいと思う。
…………限界だ。
「………もういいから寝ろよ。俺も寝るわ。」
そう言って、ベッドから立ち上がろうとした時。
梨子が、俺の腕を引っ張った。
振り返れば、梨子は俯いていて、
その表情を窺う事はできない。