「呼んでみただけです。」
「ッ!!」
俺は、その両手を無理やり払った。
……こっちの気も知らないで!この女!!
少し大きすぎるらしいバスローブの袖口から、指先だけが覗いている。
生乾きの柔らかそうな髪、はだけたバスローブから見え隠れする素足………。
俺は、目を背けた。
健全な26歳の男子にとって、それは生き地獄でしかない。
「朔ちゃん、小さい頃はどんな子供でした?」
「……突然だな。」
「はいっ!」
「……変なガキだったな。ずーっと蟻の行列見てた。」
梨子は、ふふふっと笑う。
「面白いですっ!
私は、どんな子供だったと思いますか?」
「……すぐ迷子になってたんじゃねぇ?」
「どうして分かるんですか!?スゴいです!!」
……分かるよ。
マイペースでド天然だからな。