急がねぇと……。
そう思いながらも、
俺はポケットから財布を取り出して、もうすっかり汚くなってしまった一枚の写真を手にした。
勢いだけで強盗なんかやろうとしてんだ。
少しでも冷静になっておきたい。
写真には、
詰め襟の学ランを上まできっちり留めて黒ぶちメガネの、クソダッセぇ15歳の俺………と、その隣のセーラー服の少女。
水沢詩織……。
彼女は、今頃どうしているだろう。
女神のように美しかったクラスのマドンナ。
きっと、幸せなんだろうな。
もう結婚だってしてるかもしれない。
………俺なんかとは、正反対の人生なんだろう。
あーぁ、ダッセぇ。
俺は自嘲ぎみに笑う。
中学の卒業式の、たった一枚の写真を未だに持ち歩いてるなんて、マジで救いようがねぇ。
初恋の女を11年経った今でも忘れられねぇ、とか…………そりゃ、付き合う女も愛想尽かして当然だ。
自分の腐った人生を脳内で再生して、バカらしくなる。