激しい雨に叩きつけられながら、俺は歩いた。
頭から水を被ったように、濡れながら。
明るかったはずの空も、暗くなりかけている。
……また、雷鳴が響き渡った。
どこかに、山小屋とかねぇのかよ。
もう、この際、通りがかった車でも構わなかった。
けれど、俺の願いも虚しく、車は一台も通らない。
土砂降りの雨は冷たく、吹きつける風に木々が揺れる。
俺は、焦っていた。
このまま、夜にでもなったら………。
「朔ちゃん…。」
俺の背中から、梨子のか細い声。
「ん?」
少しでも不安にさせないように、俺は精一杯明るい声を出した。
「……ゴメンナサイ……あたし…足手纏いで………。」
「…………。」
梨子が、泣いているのは明らかだった。