「…この車、どうしましょう?」



さすがの梨子も不安げな面持ちで、黒い車体を見つめる。




「置いていくしかないだろ。
……どっちみち、この車で逃げてるって警察は思ってるんだから、いずれは捨てるつもりだった。」


「……ここから、どうしましょう?」






車の通りもない山中。




逃亡者である以上、誰かの助けを借りるわけにもいかない。


俺は溜め息を零す。




「歩くしかねぇだろ?」


「……そうですよね…。」



未だ、浮かない表情で、顔色もよくない梨子。





「…まだ気分悪いのか?」


「……あはは〜…大丈夫ですよぉ。」



そう言葉にしながら、梨子は困ったように笑う。








その時。





ぶわぁっと、強い風が吹いた。



……次の瞬間、空が光る。






耳を刺すような雷鳴が、響き渡った。





「……まさか…………。」