一切、口を開かなくなった梨子は、さっきの事で未だに拗ねているらしい。 頬が膨れて、ときどき口を尖らせる仕草をする。 ………ガキかよ…。 けど、心の中で、そう呟く俺もいい歳して拗ねているわけで。 沈黙が続く車内。 その静けさに負けたのか、俺は次第に微睡み始めていた。 流れる景色は、相変わらずカラフルな紅葉。 美しいはずの情景も、さすがにここまで続くと飽きる。 俺は、眠りと意識の狭間を彷徨っていた。