「と、とにかく、高速は止めましょう!ほらっ、標識を見てください!あの目の前の山を越えれば、また大きな街があるようです!」
梨子が指差す先に山……は確かにあるが、周囲は山ばかりで、どの山を指し示しているのか正直分からない。
「標識によると……次は左折ですねっ!」
目の前の信号は青。
梨子はスピードを落として、左折の合図を出す………はずだった。
が。
「おわっ!!!」
「えっ!!?」
左折の合図を出すべきところで、なぜか動きだすワイパー。
咄嗟の事に、そのまま左折してしまうベンツ。
「オイっ!!」
「う〜…すみませぇん!」
「ワイパー止めろ!!」
「分かりませぇん!!」
「はっ!?」
半泣き状態の梨子。
……この女…………。
俺は、助手席から手を伸ばし、動き続けるワイパーを止める。