澄み渡る秋の空が広がる朝。
旅館の従業員らに怪しまれる事もなく、俺たちは“旅行を楽しむカップル”として旅館を後にした。
当たり前に運転席に乗り込もうとしていた俺に、梨子は言った。
「今日は、私に運転させてください!」
「…免許あるのか?」
「はい!大丈夫です!」
真っすぐな瞳で、微笑む梨子。
……このド天然が車の運転?
俺は、梨子に疑いの目を向ける。
「いつも、朔ちゃんにばかり運転を任せていては、申し訳ないです。」
梨子は瞳を輝かせる。
仕方なく、俺は車のキーを梨子に渡した。
……大丈夫だよな?免許あるって言ってるし。
俺は助手席に乗り込み、梨子の様子を窺う。
梨子は、シートベルトを締める。
珍しく、凛々しい顔つき。
……なんだ、大丈夫そうじゃん。