出会いは、始まりじゃないんだ。
俺たちは、出会ったときから終わりに向かって走っている。
この逃亡生活が、どんなに楽しくても。
俺が、どんなに梨子を想ったとしても。
その先に、未来はない。
そんなもん、どうしたって傷つけあうだけだろ?
だったら、何もかも錯覚だと思うべきだ。
それに、俺自身、惑わされているだけかもしれない。
この特殊な状況に惑わされている…………そう考える方が普通じゃないだろうか。
……どっちにしても、自分の気持ちが自分で分からないというのは、厄介だ。
ただ、確かな事は、
今、俺が梨子を失うのは“死”に等しいという事。
梨子がいなくなったとしたら、俺は今までのように平静ではいられなくなる。
いつ捕まるかも分からない恐怖に怯えて、取り乱すだろう。
俺は、楽観的な梨子に救われているのだ。