「私が目を光らせていますから!
刑事らしき方を発見したら、すぐにお知らせします!」
そう言って、警察官のつもりなのか、敬礼のポーズをしてみせる梨子。
……恐ろしく頼りねぇよ。
そんな俺の心の声が伝わったのかは知らないが、
梨子はテーブルを挟んで向き合って座る俺に、身を乗り出して急に小声になる。
「例えば、あの人……。」
梨子の視線の先に主婦らしきオバサンが二人、テーブル席にいる。
「あの二人は一見、遅いランチをとる主婦………に見えますが、実はスパイなんです!」
「はっ?」
「我が国の大統領の命令を受けて、一般人に成り済まし、
日本を襲う怪人やら、幽霊やら、はたまた宇宙人から、この国を守っているのです!」
「おいおい、後半いろんなの出てきちゃったよ。
しかも、日本に大統領はいねぇぞ。」
「しっ!お二人は今、ヒミツの計画を練っている最中です!耳を澄ましてみましょう!」
よく分かんねぇが、
とりあえず言われるがまま、耳を澄ましてみる。