また別の服に身を包んだ梨子は、ポーズをキメるとウィンクまでした。




俺は、そそくさと目を逸らす。



波が揺れるように騒めく心、俺は気づかなかった事にする。








梨子は思う存分ファッションショーを楽しんで、
結局、エスニックっぽい柄のロングのワンピースに、ブラウンのフリンジベスト、白いサンダルで落ちついた。









「お腹空きませんか?」


「あぁ、そういえば…。」


「次は、ご飯を食べましょう!」







せっかくですから逃亡生活を楽しみましょう!、
その言葉通り梨子は、奇妙な逃亡を楽しんでいるらしい。







スローなリズム、
軽やかでゆったりした梨子が持つ空気に、俺は馴染み始めていた。



それは、不思議と居心地がいい。






気を引き締めなければ、
俺たちは逃げているんだ、という意識さえ空高く飛んでいってしまいそうな気がした。